クラブ「NOON」事件大阪地裁判決を踏まえた法改正を求める意見書

レッツダンス法律家の会
代表 中 村 和 雄


1 本年4月25日、大阪地裁第5刑事部(齋藤正人裁判長)は、クラブ「NOON」経営者である金光正年さんに対する風営法違反被告事件について無罪判決を言い渡した。同判決の内容は、現在同法について改正が検討されている「ダンス規制」のあり方につて重要な影響を及ぼすものである。改正される「ダンス規制」の規制内容は本判決を充分に踏まえた適切な内容とすることが不可欠である。今後の法改正議論にあたって、本判決の内容が正しく反映されることを願い、当会は本声明を発表するものである。

2 金光さんに対する公訴事実は、許可を受けずに、設備を設けて客にダンスをさせ,かつ酒類等を提供して飲食させたというものであり、風営法2条1項3号に違反するというものである。設備を設けて客にダンスをさせ,かつ種類等を提供して飲食させたことについて争いはなく、許可を受けていないことも争いがない。争点は、許可が必要か否かであった。
  この点について、判決は以下のように判示した。「本件各規定による3号営業の無許可営業規制は,職業の自由(憲法22条1項)を制約するものであるほか、場合によっては表現の自由(憲法21条1項)の制約にもなり得るものである。そうすると本件各規定の規制対象となる営業については、これらの憲法上の権利を不当に制約することのないように、規制目的との関係で必要かつ合理的な範囲に限定すべく、慎重に解する必要がある。」「許可の対象とされる3号営業とは,形式的に「ナイトクラブその他設備を設けて客にダンスをさせ、かつ客に飲食をさせる営業」との文言に該当することはもちろん,その具体的な営業態様から,歓楽的、享楽的な雰囲気を過度に醸成し,わいせつな行為の発生を招くなどの性風俗秩序の乱れにつながるおそれが、単に抽象的なものにとどまらず、現実的に認められる営業を指すものと解するのが相当である。」

3 判決は、風営法2条1項3号の規定を直ちに憲法違反であるとはしなかったものの、同規定について合憲限定解釈をし、同規定の適用範囲をきわめて限定的な範囲で認めるとした。そしてその適用範囲は、諸般の事情を総合して、性風俗秩序の乱れにつながるおそれが現実的に認められる営業のみであるとした。そして、クラブNOONにおける営業がそのようなおそれがないことを認定し、許可を取らずに営業したことが同規定違反にはならないとしたのである。
  判決は,同時に、3号営業の規制目的について詳細に検討し、規制薬物の使用や取引の防止、騒音や振動による周辺環境の悪化防止、および営業所内における粗暴事案の防止などは3号営業の規制根拠とはなり得ないとしている。
  判決は3号営業についての判断であるが、同判決の判断内容は1号営業および4号営業についても同様に該当するものである。
  すなわち、判決は、現行法における「設備を設けて客にダンスをさせる営業」は、許可を取らずに営業したとしても直ちに違法になるものではなく、許可が必要なのは性風俗秩序の乱れにつながるおそれが現実的に認められる営業のみであることを明らかにした。そして、判決は、同規定の運用にあたって、規制薬物の使用等の防止、騒音や振動の防止、粗暴事案の防止などを目的として解釈することはできず、それらの目的は同規定と別の規制によって実現されるべきことを明確にしたのである。

4 刑罰法規を含む規制法においては、規制対象は明確に限定されることが必要である。現行法はすみやかに改正されなければならない。もっとも、現在検討されている改正案の中には,上記判決の内容に矛盾すると思慮される案が存在する。現行法のような「ダンスをさせる営業」というきわめて不明確な文言を改正法にあたってそのまま残存させることがないように要望する次第である。