ダンス規制法改正案の可決にあたっての声明

真の改正に向けて、さらにご支援をお願いいたします

2015年6月17日 Let’s DANCE 署名推進委員会 Let’s DANCE 法律家の会

 ダンス規制法(風営法)改正案が6月17日、参議院本会議で可決・成立しました。「ダンス」に着目した規制は撤廃され、長く関係者の悲願であったダンスホールの規制緩和も実現しました。「ダンス営業を規制するのはおかしい」という声をあげ請願署名運動がスタートしたのが、2012年5月29日でした。以来3年間、変わらぬご支援をいただいた、呼びかけ13氏、賛同208氏をはじめ、ダンス文化議員連盟の国会議員のみなさん、署名や運動にご協力いただいた16万人のみなさんに心から感謝申し上げます。
 一方で、衆参両院における改正案の審議を通じ、「遊興」という新たな枠組みでの規制強化の懸念が、いよいよ浮き彫りになりました。営業所の立地についても、実際には繁華街に限定され、その他の地域では許可すら取得できないおそれも生じています。今後、施行までに策定される政令や解釈運用基準、都道府県条例という具体的なルールづくりにおいて、事業者や利用者、地域住民の声を生かすことが求められます。

■新たな枠組み「遊興」規制は対象を限定し明確化を

 今回の改正の焦点は、従来「ナイトクラブその他設備を設けて客にダンスをさせ、かつ、客に飲食をさせる営業」(風営法2条1項3号)とされていたクラブ営業を、「特定遊興飲食店営業」という枠組みで深夜営業を可能にするというものです。
 しかし「遊興」とは何かをめぐり審議は白熱しました。国家公安委員長や警察庁の答弁者は、「遊興」とは、「営業者側の積極的な行為によって客に遊び興じさせる」行為として、具体的には「不特定多数の客に歌、ダンス、ショウ、演芸、映画その他の興行等を見せる行為、生バンドの演奏等を客に聴かせる行為、のど自慢大会等客の参加する遊戯、ゲーム、競技等を行わせる行為」などの答弁に終始しました。
 「善良の風俗を害するおそれ」のあるダンスや生バンド演奏、演芸、映画とは何なのか。どんな基準で、だれが判断するのか。許可制で違反すれば刑事罰まで新設されたもとで、違反とされる行為の内容を明確に規定しておかなけれならないという原則(罪刑法定主義)から逸脱した答弁に、各委員から厳しい批判が相次いだのは当然です。当局者は、「解釈運用基準で明確にしたい」と繰り返しました。
 個々の具体的な事例について参議院では一定の判断を示しました。なかでも「野外イベント」について、規制の対象ともとられかねない答弁を行ったことは重大な問題です。
 各委員は、規制対象の明確化と「善良の風俗を害するおそれ」のない営業については対象とせず、限定的に解釈するよう求めました。同時に政令や解釈運用基準、都道府県条例の策定にあたって、事業者や関係者の意見を十分に聞くよう迫りました。当局者は、「広く意見を聞いて検討したい」と答えました。

■不当なNOON事件を繰り返さない
 
 「ダンス営業」規制という不明確で恣意的な摘発が、大阪地裁、同高裁で断罪された大阪・クラブNOON事件。衆参両院で各委員は判決内容を引用しながら、「遊興という不明確なルールでは、第2、第3のNOON事件が起こりかねない」と指摘しました。政府側の答弁者が、「公序良俗に配慮しながら極力自由にすることが新しい文化を広げることになる」と強調したこととあわせ、表現の自由、営業の自由を守る立場での運用こそ、国民のコンセンサスであることを鮮明にしています。

■警察庁、都道府県公安委員会・同議会、地域に向けた運動を

 警察庁は、法改正後の施行までに策定される政令や規則、解釈運用基準について、営業者や地域住民の声を反映するよう約束しました。あわせて立地要件などは、都道府県公安委員会、同議会での検討課題となります。ルールの具体化にあたり、実情にそくした声を届けることは急務です。
 また改正法では、事業者、地域住民、警察などでつくる「風俗環境保全協議会」の設置が義務づけられています。いまこそ、「安心・安全で活気あるまちづくり」「ダンスや音楽文化が花開くシーンの発展」などを考え合い、協働する絶好のチャンスです。
 法改正は、必ずしも私たちが望んだ形にはなりませんでした。しかし、声をあげ国民的な議論がすすみ、政治は動きました。また、たくさんの仲間が広がったことは、大きな財産です。これからも、全力でがんばります。ご支援を心からお願いいたします。

以上