「風俗営業等の規制及び業務の適正化等に関する法律の一部を改正する法律案」に対する意見書

「風俗営業等の規制及び業務の適正化等に関する法律の一部を改正する法律案」に対する意見書

2014年11月16日
Let’s DANCE法律家の会
代表 中村和雄

1 はじめに
2014年10月24日、内閣は「風俗営業等の規制及び業務の適正化等に関する法律の一部を改正する法律案」(以下、改正案)について、閣議決定を行った。

改正案は、これまで風営法において客にダンスをさせる営業として規制してきた第2条1項1号、3号、4号の各営業への規制について、1号営業は2号営業(いわゆる接待飲食営業)に統合し、3号(ダンス及び飲食営業)、4号(ダンスのみさせる営業)については削除することとしている(改正案2条1項1、2号)。これにより風営法から「ダンス営業規制」が撤廃されることとなった。

これは、私たちLet’s DANCE署名推進委員会及びLet’s DANCE法律家の会が、2012年の運動開始当初から訴えてきたダンス規制撤廃や、ダンス文化推進議員連盟(以下、ダンス議連)及び規制改革会議が示した方向性、さらには圧倒的な世論の方向性と合致するものであり、評価に値する。

今日までダンス規制撤廃に向けてご協力をいただいた全ての方々に感謝し、御礼を申し上げる。
もっとも、ダンス規制撤廃の願いは、「ダンス」の文言を法文から削除することだけでなく、健全なダンス文化が発展し、関連する経済活動を活性化させることにある。

この点で、改正案は、「ダンスをさせる営業の規制の在り方等に関する報告書」(風俗行政研究会)の内容に準じており、私たちが同報告書に対して、意見書(2014年9月16日付風俗行政研究会「ダンスをさせる営業の規制の在り方等に関する報告書」に対する意見書)において指摘した重大な懸念がそのまま妥当する。

以下、改正案について若干の検討を加える。

2 「特定遊興飲食店営業」規制について
改正案は、法31条の22以下において、「特定遊興飲食店営業」としての規制を新設するものとしている。クラブなどで深夜に酒類提供を行う営業は、かかる類型としての規制を受けることを想定しているようである(同改正案「概要」書面、改正案2条11項等)。

特定遊興飲食店営業については、許可を取得すれば午前0時から6時までの深夜時間帯の営業が可能となるとされている(改正案31条の23による1項を除く13条準用)。これまで3号営業としては禁止されていた深夜営業が認められたことは前進とも評価できる。

しかし、特定遊興飲食店営業規制は、遊興させることを内容とする営業を対象とし、「遊興」概念を中核としている(改正案31条の22以下)。かかる「遊興」概念が曖昧不明確なものであり、そのような概念をもって一定の営業を原則禁止として規制することは、あまりに広範な規制として、憲法上保障された基本的人権を制約することにもなりかねない。この点は上記意見書において指摘した通りである。

仮に改正案が成立した場合、せめて法律施行日までに、「遊興」が歴史的に有してきた概念や現代社会における対象営業の具体化などの検証作業を通じ、解釈運用基準等において「遊興」概念を明確化して規制対象営業の範囲を特定し、過度に広範な規制とならないようにするなどの対応が必要である。
また、営業所面積をはじめとする営業所の構造要件や営業可能地域を定める営業制限地域の設定などについては、これまで問題なく営業している事業者が、改正によって廃業しなければならないような事態とならないよう、関係法令を整備することを求める。

3 低照度飲食店について
改正案は、上記特定遊興飲食店営業において照度の下限値とされる10ルクスを下回った場合、従前から風俗営業とされている「低照度飲食店」規制(現行法2条1項5号)を適用して摘発することを示唆している(同改正案「概要」書面など)。
しかし、上記意見書においても指摘したように、そもそも低照度飲食店として想定されている営業形態は、クラブ営業などとは異なるものである。かかる低照度飲食店規制をクラブ営業に当てはめて規制することは、想定されていた規制対象営業と異なる営業を対象とする点や恣意的な運用を招きかねない点で、ダンス営業規制と同様の問題を生じさせる。

そこで、上記「遊興」概念と同様に、改正案が成立した場合、いかなる営業が「低照度飲食店」営業に該当するのかを改めて明確化し、照度規制の在り方(照度測定地点や方法など)と合わせ、不当な規制とならないよう関係法令の整備を求める。

4 風俗営業者又は特定遊興飲食店営業者の義務(新設)について
改正案は、営業所周辺における客の迷惑行為の防止措置や、苦情処理に関する帳簿を備え付けて適切な苦情処理を行うことなどを努力義務として定めている(改正案13条3、4項及びこれを準用する31条の23)。
各営業所が常識の範囲内で、営業所周辺の環境を整え、的確な苦情については適切に処理することは当然のことである。
ただ、これを明文化することで新たな規制強化とならないよう、関係機関は運用などにおいて十二分に注意することを求める。

5 「風俗環境保全協議会」の設置について
改正案は、風俗営業、特定遊興飲食店営業、深夜酒類提供飲食店営業を営む者と管轄警察署長、地域住民などで構成され、情報共有や関係者連携の緊密化を図る「風俗環境保全協議会」を公安委員会が設置するよう努力することを定めている(改正案38条の4)。
かかる地域連携機関自体は、実効的に運用がなされれば、当該地域を安心安全な街として、経済的に活性化させていくことに貢献すると考えられ、同協議会の設置自体は評価できるものである。

もっとも、同協議会自体の活動自体が形骸化し、取り締まり強化のための道具と成り下がるならば、同協議会は百害あって一利なしと評価せざるをえない。適正な運用がなされるための仕組みづくりが必要となろう。
6 以上のほかにも営業禁止地域の設定など、改正案が成立した場合に整備が必要な関連法令は多岐にわたっている。これらの規制が不当な内容とならないよう、Let’s DANCE署名推進委員会とLet’s DANCE法律家の会は、ダンス議連をはじめ関係機関と協力しながら関連法令の整備について見守り、関与していく所存である。

以上