Let’sDANCE法律家の会・署名委員会より警察庁にパブコメ提出

【Let’sDANCE法律家の会・署名委員会より警察庁にパブコメ提出】

本日8月7日付けで、警察庁が本日24時まで受付ている風営法のダンス営業規制について募集しているパブリックコメントを、Let’s DANCE署名推進委員・Let’s DANCE法律家の会として提出致しました。パブコメの内容は以下になります。

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「客にダンスをさせる営業に関する風営法の規制の見直しに当たって考えられる論点」に対する意見

2014年8月7日

Let’sDANCE署名推進委員・Let’sDANCE法律家の会
Let’sDANCE法律家の会代表 弁護士中村和雄

1 はじめに

Let’s DANCE 署名推進委員会、Let’s DANCE 法律家の会は、「風俗営業等の規制及び業務の適正化等に関する法律」(風営法)にかかわるダンス営業の規制の見直しを求め、2012年5月より取り組みをすすめてきた。昨年の通常国会に提出した、「風営法の規制対象から『ダンス』を削除してください」等を請願事項とする請願署名には、音楽家の坂本龍一さん、大友良英さんをはじめ、音楽・ダンス・アート・法曹界など多彩な分野から、220人の呼びかけ・賛同人が名前を連ね、全国47都道府県から約16万人が署名を寄せている。
 いずれも、「ダンス営業の規制は時代遅れ」「よりよいダンスカルチャーを」という思いを込めた署名であり、意思表示である。
 昨年には、超党派の国会議員による「ダンス文化推進議員連盟」が結成され、風営法の「ダンス営業規制」の見直しをめざし、関係者からのヒアリングを重ね、議員立法のとりまとめをすすめていただいた。また内閣府の規制改革会議の創業・IT等ワーキンググループにおいて、同様のヒアリングや検討が行われ、「ダンス営業の規制緩和」を盛り込んだ答申が提出され、答申をふまえた規制改革実施計画が閣議決定されている。
 これらは、風営法が業法として営業のあり方を規制するばかりでなく、利用者・国民の立場からみても、その利益を損なっている──という多くの国民世論をふまえた判断と評価できる。

2 「『ダンス』で規制するのはおかしい」という世論の広がり

 上記ダンス文化推進議員連盟がとりまとめた風営法改正案の概要(平成26年6月18日)においても、「緩和の理由」として「ダンス規制の立法事実であった売春事犯の多発という事実は確認されず」「酔客、騒音等の問題は…個別の規制で対応可能」「ダンスの意義が変化」などが明記されている。
 また、規制改革会議の「ダンス営業に係る風営法規制の見直しに関する意見」(平成26年5月12日)では、「(風営法において)『ダンス』の定義が存在せず、その判断基準が曖昧」と指摘したうえで、「『ダンス』という切り口での規制は、クラブやその周辺での暴力沙汰、酔客による騒音等の問題に対する有効な解決方法となっているとは言い難い」と結論づけ、ナイトクラブ等を「風俗営業から除外した上で、深夜営業を可能とし、騒音等の各種問題に対して有効に対応できる新たな規制を導入すべきである」としている。またダンス教室等について、「風営法制定時とは異なり、様々なダンスが広く国民生活に浸透している現在において、ダンスをさせる営業が相変わらず風俗営業とされることに伴う諸規制は、国民の意識や営業実態と乖離した規制となっている」と指摘し、風俗営業からの除外を求めている。
 ダンス文化推進議員連盟でも、規制改革会議においても、この間、関係者からのヒアリングや検討を重ね、「『ダンス』を規制するのはおかしい」「問題事象については別途、相応の規制をおこなうべきだ」というコンセンサスに至ったことは重要である。多くの世論をふまえた正当な結論であり、法改正にあたってはこの点を尊重すべきである。

3 「ダンス」営業規制に疑問を投げかけたNOON事件判決

 本年4月25日、大阪北区にあるクラブNOONにおいて、平成24年4月4日午後9時43分、大阪府公安委員会の許可を得ず,「ナイトクラブその他設備を設けて客にダンスをさせ,かつ飲食させる営業」を行ったとして,風営法に基づき,無許可営業罪として、同クラブ経営者が、逮捕・勾留、起訴された事案に対し、大阪地方裁判所第5刑事部は、起訴された経営者について無罪判決を言い渡した(検察控訴中)。
 上記判決は、①風営法2条1項3号のダンス営業規制の目的を性に関わる歓楽的、享楽的雰囲気を過度に醸成するおそれのある営業の規制に限定すべきことを明言し、②ダンス営業規制が、職業選択の自由(憲法22条1項)に対する制約だけでなく、表現の自由(憲法21条1項)に対する制約ともなりうるとし、③これら憲法上の権利を不当に制約しないよう、規制目的に照らして必要かつ合理的な範囲に規制対象を限定すべきとして、ダンス営業規制対象営業を「形式的に『ナイトクラブその他設備を設けて客にダンスをさせ、かつ、飲食をさせる営業』との文言に該当することはもちろん、その具体的な営業態様から、歓楽的、享楽的な雰囲気を過度に醸成し、わいせつな行為の発生を招くなどの性風俗秩序の乱れにつながるおそれが、単に抽象的なものにとどまらず、現実的に起こり得るものとして実質的に認められる営業」と定義した上で、クラブNOONにおける営業はそのようなものと認められないとして、同クラブ経営者を無罪としたものである。
 上記判決から導かれるのは、ダンス営業規制対象となる営業は性風俗秩序の乱れにつながるおそれが実質的に認められるなど極めて限定的なものであって、大半の健全なダンス営業は規制対象とならない可能性が高いことである。また判決は、これまでダンス営業規制の目的として指摘されてきた各種弊害、違法薬物の蔓延、騒音や振動による周辺環境の悪化や粗暴事案の発生は、いずれもダンス営業規制そのものの目的ではないことを明言した。これはこれまでの捜査のあり方に根本的な見直しを迫るものである。そして、判決は、ダンス営業規制対象となる営業かどうかは諸般の事情を総合して判断すべきとしている。これは事業者や捜査機関において、当該営業が規制対象営業かどうかを見極め、許可申請や許可を行うことが非常に困難であり、事実上不可能と評価しうる。
 上記判決からは、「ダンス」を指標に性風俗秩序を統制しようとすることが時代遅れであり、ダンスを一律にいかがわしいものとするダンス営業規制が、事業者や捜査機関における無用の混乱を招いていることを示している。

4 抜本的な改正こそ事業者・利用者の願い

 ダンス営業規制は、もはや画一的で明快な基準を示すことができず、事業者や捜査機関、さらには利用者に無用の混乱を強いている。この規制がさらに存続するならば、今以上に「無許可営業」の境界は曖昧となり、グレーゾーンは果てしなく拡大していく。この点の法改正は急務である。
 ただ、法改正によって仮に規制基準が別の概念に置き換えられたとしても、その概念に複数の解釈の余地が残るのであれば、同様の混乱をもたらすことは明らかである。検討の対象とされている「遊興」概念なども曖昧な内容を含んでおり、その最たるものである。
 さらに、法改正の内容が「立地規制」や「面積要件」について、従来の「風俗営業」の枠組みのまま引き継がれるなら、「営業時間の延長」など規制緩和の恩恵が、実際には極めて限定された事業者にしか享受されないことになる。その結果、やはりグレーゾーンの「無許可営業」が拡がり、同様の混乱が引き起こされることになる。
 法改正にあたっては、ダンス基準での規制を抜本的に改正することはもちろん、客観的基準で必要最小限の規制を行うことが求められる。事業者・利用者からは、「せめて同様に音楽と飲食を扱うカラオケ営業なみに」という強い要望が寄せられている。その上で、それぞれの問題に応じた個別法規の適切かつ有効な活用と、事業者や利用者、地域住民、行政等が一体となり連携した取り組みを行うことが、より実効的解決を可能にするものである。
 私たちは、風営法の枠内から「ダンス」規制を撤廃することこそ、合理的な解決の道だと確信する。その途上であっても、事業者や利用者の要望に寄り添った改正を強く求める。

5 後世に残る改正へ

 今回の法改正をめぐり、国民的な議論がおこるなかで、従来は事業規模や業態の違いから連携するのが困難なダンスやクラブの関係者に、新たな対話や連携の動きが生まれている。
 自主的な団体の設立や、コンプライアンスの強化、自主ルールの策定などに加え、地域住民のみなさんとの対話・協働、まちの一員として活気ある安心・安全なまちづくりへの参画など、「当事者」としての努力が始まっている。
 言うまでもなく、ダンス文化はますます多様化し、教育現場にもダンスが取り入れられるなど、ダンスの文化的・経済的な重要性が増している。2020年には東京オリンピックが開催されることから、音楽やダンスを生かしたまちづくり、「おもてなし」の具体化は急務といえる。
 豊かなダンス文化と経済活動の享受、よりよい地域社会を形成する法的枠組みをつくりあげてこそ、後世に残る歴史的な改正となりうると確信し、法改正にあたり、以下、要望する。

1.風営法の規制対象からの「ダンス」削除。
2.健全なダンス文化の推進や、営業・経済活動を活性化するため、大多数の事業者・ダンス関係者の要望に沿った改正・運用をはかること。
3.表現の自由、芸術・文化を守り、健全なダンス・文化発信の施策の拡充。

6 設定された論点について

(1)はじめに

 冒頭にも述べたように、風営法のダンス営業規制をめぐる議論は、ダンス文化推進議員連盟においても、規制改革会議においても検討が重ねられた結果、「『ダンス』を規制するのはおかしい」「問題事象については別途、相応の規制をおこなうべきだ」というコンセンサスに至っている。とりわけ、規制改革会議の風営法規制の見直しに関する意見はダンス営業を風俗営業から除外することを内容とし、その大要が規制改革実施計画として閣議決定されるに至っている(平成26年6月24日閣議決定)。 「ダンス規制」を見直し、風営法のダンス営業規制の改正が必要であることは、もはや社会的コンセンサスとなっている。
 にもかかわらず、貴庁が設定する「見直しに当たって考えられる論点」は、いまさらながらに風俗営業からの除外などの改正の是非を問い、さらにはあたかも改正によって弊害が生じるかのような内容となっている。
 これは上記のようなダンス営業規制見直しの社会的コンセンサスが得られているなかで、所轄官庁である貴庁自身が、このような論点設定を行うこと自体、世論に対して誤導となりかねないという点について、強い危惧の念を抱くものである。
 そもそも、3号営業等に関連して挙げられている弊害(騒音・い集、傷害事案、薬物売買等)は、「『ダンス』という切り口での規制は、クラブやその周辺での暴力沙汰、酔客による騒音等の問題に対する有効な解決方法となっているとは言い難い」との規制改革会議の意見にもみられるように、「ダンス」に由来するものでない。考えられる弊害については、事業者、利用者、地域住民、行政等が一体となった連携による対応や、そのための条件整備によって解決を図っていくことこそが重要であるというのが、この2年間の議論から導かれる方向性である。むしろ、風営法によるダンスを基準とした曖昧かつ強度の規制、これに伴って不可避的に生じているグレーゾーン営業といった事象が、こうした連携を困難にしている元凶である。
 全国の自治体では、すでにいわゆる「生活安全条例」―東京都「東京都安全安心まちづくり条例」、大阪府「大阪府安全なまちづくり条例」など―が制定されている。このうち東京都の条例改正における議論では、「安全・安心な繁華街を形成しながら、街の活性化を図っていくためには、行政や警察による安全・安心の確保を基本にしつつも、事業者、地域住民、ボランティアによる自主的、継続的な取組が重要であり、そのための推進体制を整備することが必要である。」などとされ(東京都安全・安心まちづくり有識者会議、平成21年2月)、事業者や地域住民、さらには来訪者まで含めた、いわば関係者一丸となった連携こそが問題の解決につながるとの考え方が示されている。
先に述べたように、「当事者」である事業者の中にも、風営法の改正論議と軌を一にして自主的な団体の結成や、地域住民との協力・連携を通じ、コンプライアンスの遵守、まちづくりへの参画など、新たな動きが広がっている。こうした主体的条件が醸成されつつある今こそ、想定される社会的課題を社会全体の連携で前向きに乗り越えるチャンスである。
 いま行政が積極的に進めるべきことは、ダンス営業規制やそれに類する風営法の規制枠組みの温存ではなく、各問題に対応した個別法規の適切かつ有効な活用とその整備、さらには事業者、利用者、地域住民、行政等が一体となった連携による対応を実現するための条件整備である。このことを通じて、トータルな都市や繁華街のありようを構築する時期に来ていると考える。
 以上が設定された論点についての基本的考え方であるが、あえて各論点について必要な点を回答すれば、以下のようになる。

(2)3号営業について

 ア 風俗営業からの除外

・風俗営業からの除外は規制改革会議の意見においても示されており、当然に除外が妥当である。
・別途の法的規制は不要であり、カラオケ店なみの現行規制(深夜酒類提供店など)の範囲にとどめるべきである。むしろ、弊害防止のための個別規制を必要な範囲で強化することが重要である。
  貴庁が指摘するように3号許可店舗でも「弊害」が発生しているのであれば、それはダンス営業規制に実効性が存しないことの表れである。
・遊興について
 貴庁によれば、「客にダンスをさせること」も遊興に含まれるとの注釈がなされ、これを前提に議論がなされている。しかし、解釈運用基準においても、客にダンスをさせることが遊興に当たるとの議論はなされてこなかった。そのような曖昧な遊興概念を規制基準とすることは、「ダンス」同様、弊害に対する直接の規制でないことから実効性を欠き、さらにその概念の曖昧さから事業者や行政に混乱を招くこととなり、問題解決を図ることはできないと考える。
 
イ 営業時間規制緩和
 
・3号営業同様に騒音が伴うカラオケ等は時間規制を有しないのであり、これらと同様に考え、深夜帯の営業を認めてよいと考える
・地域住民の良好な環境保持等については、騒音防止法などの個別規制を強化し、適切かつ有効な活用を行うことで実現すべきである。現行のダンス営業規制によってグレーゾーンでの営業が存続するよりも、問題解決に効果的である。
・繁華街の環境浄化対策については、上記生活安全条例を効果的に運用するなどして、事業者も含めた地域一体での連携した取り組みを強化することで対応すべきである。
 
ウ 他の風俗営業
・今回のダンス営業規制をめぐる議論は、風俗営業一般の議論ではなく、「ダンス」で規制することの不合理性に根本がある。そうであれば、他の風俗営業は無関係であって、併せて検討する必要はないと考える。

(3)4号営業について
 
ア 規制対象からの除外
  
・「ダンス」から生じる弊害はない以上、規制対象から当然に除外すべきである。仮に問題が生じるのであれば、その問題に対応した個別法規の適切かつ有効な活用によって対応すべきである。

イ 問題のある営業が出現した場合の措置

・指摘されるような「問題」は、「ダンス」が問題なのではなく、「出会い系」であることが問題視されていると考えられる。そうであれば、「出会い系ダンスホール」なるものについて規制が必要であるなら、出会い系喫茶についての法令を整備するなどして、問題に直接対応した個別法規によって対応すべきである。

以上

パブリックコメント Let’sDANCE