アーティスト・芸術団体と観客の間をつなぐ国際的組織「舞台芸術制作者オープンネットワーク」が10月14日、京都市内で「表現の自由をめぐって」をテーマにシンポジウムを開き、Let’s DANCE署名推進委員会(LD)共同代表の齋藤貴弘弁護士が、「ダンス規制」の現状と今後の展望について語りました。現在開会中の京都国際舞台芸術祭の共催企画です。
 モデレーターは、橋本裕介氏(同ネットワーク理事長)、スピーカーとして齋藤氏のほか、吉岡洋(京都大学文学部文学研究科教授)、原智治(京都市文化市民局文化芸術都市推進室文化芸術企画課)、丸岡ひろみ(国際舞台芸術交流センター理事長)の各氏。
 齋藤氏は冒頭、クラブなどにたいする取締の激化に端を発し、風営法のダンス規制による摘発に異義をとなえる運動としてLDが発足。1年間で15万人をこえる請願署名が寄せられ、数十人の「ダンス文化推進議員連盟」が結成された経過と、風営法の規制の中身について語りました。
 橋本氏やスピーカーの質問に答える形で齋藤氏は、LDの運動が一業界の利害のみにとどまらず、利用者やミュージシャンらの表現の自由を侵害している問題として、広く訴えたこと、法律の上位法である憲法のなかでも表現の自由は、民主制をささえる重要な要素であることを指摘しました。
 吉岡氏は、アートに価値を見いだす美的判断にさいし、好き嫌いや利害関係を一切ともなってはならず、そのうえでも表現の自由は尊重されるべきだと強調しました。
 「舞台をつくる側」の立場から丸岡氏は、表現の自由を保障する社会のあり方や、「表現の責任」を負う立場から表現者にとどまらず劇場や主催者らが「自主規制」する風潮について問題を提起しました。
 京都市職員の立場から「公共性」と表現の自由について語った原氏は、公共の福祉に反しない限りにおいて、行政が表現内容を判断する基準をもちえないことを示し、「行政がジャッジしたりルールでしばるのではなく、価値の衝突を通じて関係者でコミュニケーションすることが大切」とのべました。
 議論は、舞台やアート、ダンスをふくめ表現の価値を社会的に認め合う発信の重要性や、助成金の削減、過剰な摘発にたいしどのように対処すべきなのか──などについて縦横に広がりました。齋藤氏は、「クラブ業界としてもビジョンをもって発信しなければ、実際のルール改正にあたりミスマッチになりかねない」とのべ、社会的な共感や当事者の現状から出発した議論の必要性を強調しました。
 ジャンルの違う方たちの表現をめぐる議論に、「わくわくして話を聞きました。社会的なコンセンサスづくり、民主的な社会をどう構築するのかのイメージが広がりました」(聴衆)と感想が寄せられました。
(文責:LD事務局ニドラン・ケースケ)